定年後の生活

老後の一人暮らし、寂しさに打ち勝つための新たな視点と5つのステップ

「一人の老後」は、増え続ける高齢者の現実であり、特に先進国で見られる傾向です。一人で生活することは、自由である一方で、孤独や寂しさといった感情も伴います。

そこで今回は、一人の老後を寂しくない生活に変えるための7つのステップをご紹介します。これらのステップを参考に、自身の老後生活に活かしたり、大切な人の生活をサポートするためのヒントにしてみてください。一人でも、老後の生活は寂しくなく、充実したものにすることが可能です。

①老後の生活の想像:一人であることのリアリティを理解する

老後の生活を想像するとき、多くの人は一人暮らしを思い浮かべるかもしれません。その背後には、先進国における高齢者の生活形態の変化があります。

Pew Research Centerによると、アメリカでも60歳以上の成人の27%が一人暮らしをしており、これは全世界の16%と比べて高い割合です​​。一人暮らしの高齢者は、世界的に見ても多い傾向にあります。

日本でも高齢者の独居問題が深刻化しており、2019年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の者のいる世帯数は全世帯総数の49.4%を占め、1986年に比べて大幅に増加しています。単独世帯(ひとり暮らしの世帯)と夫婦世帯が全世帯の6割を占めています。これは、高齢者の中にはパートナーや家族がいない、または遠くに住んでいるために一人で生活せざるを得ない人々が増えていることを示しています。

特に65歳以上のひとり暮らしの世帯は高齢者世帯の49.5%を占め、どちらも65歳以上の夫婦のみの世帯も高齢者世帯の46.6%を占めています。これらの変化は、日本の社会的・文化的な変化、経済的な問題、都市化の進行など、さまざまな要因により引き起こされています。(参考:公益財団法人長寿科学振興財団「高齢者の独居問題」)

コラム:世帯における文化や宗教の影響について

たとえば、ヒンドゥー教の信者は、他の宗教の信者に比べて、より広い家族と一緒に生活する傾向があります。これは、インドに多く住むヒンドゥー教徒の家族構成が、一般的に広範な親族と共に生活する形態を取っているためです。

このように、世界的に見た際に文化や宗教の違いによって、世帯構成などは大きく変わってきます。

②リスクと対策:寂しさの原因を理解し、対策を立てる

老後の一人暮らしは、孤独感や寂しさを引き起こす可能性があると一般的に認識されています。これらの感情は、メンタルヘルスに影響を及ぼし、生活の質を低下させる可能性があります。では、なぜこれらの感情が生じ、どのように対策を立てることができるのでしょうか?

一つ目の原因は、社会的なつながりの欠如です。

一人暮らしの高齢者は、家族や友人との接触が減り、孤独感を感じることが多いです。孤独感や寂しさは、心の健康だけでなく身体の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。研究によると、孤独感は心臓病やアルツハイマー病のリスクを高め、全体的な生活の質を低下させるとされています。

また、ある研究では社会的活動の頻度が高い人の方が障害の程度が低く、社会性の低い人よりも自立して長く生きられることが示唆されています。(参考:How Social Connections Keep Seniors Healthy)

この問題に対する解決策としては、地域のコミュニティに参加したり、ボランティア活動に関与したりすることが挙げられます。これにより、新たな人々とのつながりを作り、孤独感を軽減することができます。

二つ目の原因は、活動の範囲の狭さです。

健康上の問題や運転の制限などにより、一人暮らしの高齢者は家から出る機会が減少します。これに対する対策は、ホームデリバリーサービスやオンラインのコミュニケーションツールを活用することです。また、公共交通機関の利用や近くの公園での散歩なども健康維持の面からも有効です。

三つ目の原因は、精神的な問題です。

一人暮らしの高齢者は、未来に対する不安や退屈感を感じることがあります。これに対する対策として、趣味の追求や自己啓発活動があります。例えば、読書やガーデニング、オンライン学習などを通じて、自己成長を促し、心の充足感を得ることができます。

③コミュニティとのつながり:社会参加を通じた寂しさの軽減

一人の老後生活は、しばしば孤独感をもたらしますが、地域コミュニティへの参加はその解決策の一つです。コミュニティとは、共通の目標や関心を持つ人々の集まりであり、地域のクラブや団体、ボランティア活動などがあります。

コミュニティへの参加は、新たな人々との出会いを提供し、社会的なつながりを深めることができます。これは、孤独感を軽減し、メンタルヘルスの向上に寄与します。例えば、カーネギーメロン大学の研究では、定期的に社会活動に参加する高齢者は、そうでない高齢者に比べて孤独感が少ないことが報告されています​。

また、コミュニティに参加することは、自身のスキルや経験を活用し、他人のために貢献する機会も提供します。これは、自己効力感を高め、生活に意義を感じることを助けます。ボランティア活動は、特に一人暮らしの高齢者にとって有益な選択肢であり、自身の時間を有意義に使う方法を提供します。

しかし、コミュニティへの参加は、一人の高齢者にとっては困難な場合もあります。移動の難しさや健康問題、コミュニティが存在しない場合などが挙げられます。こうした課題を克服するためには、地域の支援サービスやオンラインのコミュニティを活用することが有効です。

日本では対策として様々なプログラムがあります。特に地域における高齢者の独居に対するソーシャルワーカーの役割や日本赤十字社による高齢者向けのプログラムなどがあげられます。

コミュニティとのつながりは、一人の老後生活を寂しくないものにするための重要なステップです。それは、新たなつながりを作り、社会的な活動に参加することで、孤独感を軽減し、自己実現の機会を提供します。

だからこそ、コミュニティへの参加は、一人の老後生活を豊かなものにするための有効な手段と言えるでしょう。

④趣味とレクリエーション:心と体を活発に保つ

趣味やレクリエーションは、一人暮らしの高齢者にとって重要な役割を果たします。これらの活動は、楽しみを提供するだけでなく、心と体を活発に保つことにも寄与します。

日本で最近人気の趣味といえば、登山(ハイキング)やガーデニングですが、日本独自の趣味といえば書道や茶道もあげられます。

散歩やハイキング:適度な運動は健康維持に欠かせません。地元の公園や自然豊かな場所での散歩やハイキングは、新鮮な空気を取り入れ、リラクゼーションと健康維持を同時に行うことができます。

園芸:自然と触れ合うことは心身共に健康に保つ助けとなります。多くの高齢者が家庭菜園を楽しんだり、ベランダガーデニングに取り組んだりしています。

書道:日本の伝統的な芸術である書道は、高齢者にとって集中力を高め、リラクゼーションを得る一方で、文化的な価値も持つ趣味です。

茶道:日本文化を体験するための一つの手段であり、社会的交流を深める一方、落ち着きと平和を求める精神的な側面を満たすことができます。

欧米では運動やエクササイズが一般的ですが、落ち着いて出来るタイプの趣味としてパズルやボードゲームといったジャンルも、認知機能を刺激し、楽しみながら脳を活性化するのに役立つという点からも人気です。

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⑤テクノロジーの活用:一人でもつながりを保つためのデジタルツール

テクノロジーの進化は、一人の老後生活においても重要な役割を果たしています。特に、デジタルツールを活用することで、孤独感を軽減し、社会とつながりを保つことが可能です。

コミュニケーションアプリ

LINEやZoomなどのアプリを使用すれば、遠くに住む家族や友人とも簡単にビデオ通話が可能です。これにより、一人暮らしの高齢者でも社会的なつながりを維持し、孤独感を軽減することができます。

SNS

FacebookやTwitterなどのプラットフォームを通じて、趣味や興味のある話題について共有することで、新たな友人を作るチャンスも広がります。これらのツールを利用することで、一人の老後でも豊かな情報交換とコミュニケーションが可能となります。

スマートホーム・健康管理アプリ

スマートホーム技術や健康管理アプリも重要な役割を果たします。スマートホーム技術を使用すれば、家の照明や温度、セキュリティを手元のデバイスから簡単に管理することができ、生活の利便性を高めます。一方、健康管理アプリを利用すれば、日々の運動量や食事、睡眠状態などを追跡し、健康状態を確認することができます。

バーチャルリアリティ(VR)

VRを利用することで、社会的な交流を疑似体験したり、娯楽を提供したり、高齢者をバーチャルな旅行や体験に引き込んだりすることができます。

高齢者向けテクノロジーツールの利用に関する課題

しかし、テクノロジーの利用には2つの課題があります。

一つ目の課題として、一定のスキルが必要であり、これが高齢者にとっては障壁となることもあります。この解決策としては地域のコミュニティセンターや公立図書館などで提供されているデジタルリテラシーの教室を活用すると良いでしょう。

二つ目の課題として、テクノロジーによる解決策の有効性は、経験されている孤独感のタイプ、環境要因、社会経済、技術リテラシーなどの要因によって異なるという点です。

高齢者の孤独に対する技術的解決策の有効性は、個人のニーズや状況に依存する可能性が高く、効果的であるためには他の戦略と組み合わせる必要があるといわれています。

まとめ

まだまだ技術・テクノロジーだけで対応することが難しく、今後日本や世界全体での高齢化が進むにつれ、すべての人にとってより包括的で支え合いのある社会を作る必要が増えていくといわれています。

心・体両方の面から健康を維持し、ひとりでの生活を楽しむためにも、一人一人のおかれた状況や環境にあわせた、社会的活動や趣味の場の充実がより重要となっていくでしょう。

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