定年後の生活

高齢者のイメージを変える - かっこいい新たな呼び方とは

高齢者と聞いた時のイメージは一体何でしょうか?おそらく、体力の衰えや技術の理解力が落ちているといったネガティブな印象を抱くかもしれません。

しかし年を重ねたからといって価値が減るどころか、長年の経験と知識、人生の経験は尊重されるべきです。そこで今回は一般的な「高齢者」という言葉がもつイメージを振り返りつつ、新たな視点からその呼び方を見直すことで、そのイメージ自体を変えれるアイディアを集めてみました。

現在の高齢者という単語のイメージとは

現代社会において、「高齢者」という言葉がもつイメージは、多くの場合、物理的な衰えや、テクノロジーの理解力不足といったネガティブなものに傾いており、「助けが必要な存在」や「社会の負担」といった見方もしばしば見受けられます。

現在においてこのようなイメージは、一部の高齢者に対しては当てはまるかもしれませんが、全体として見ると必ずしも正確ではありません。高齢者の中には、社会経験と知識を活かし、自分たちの力で生活を営み、地域社会に貢献している人々も多いのです。

さらに「高齢者」という言葉自体が、人々の意識にある年齢に対する固定観念を強化していると指摘する専門家の声もあります。

一定の年齢を超えた人々が一律に高齢者とカテゴライズされ、その結果、年齢による区別が強調される傾向が見られます。このようなカテゴライズは、高齢者の多様性を無視し、社会的な固定観念やステレオタイプを強化するリスクがあります。

このような「高齢者」に対する既存のイメージは、時代と共に変わりつつある高齢者の現状を正確に反映していません。現在の高齢者は、以前と比べて健康寿命が延び、物理的・精神的に活動的な人々が増えています。

また、デジタル技術を理解し、それを活用する高齢者も増加傾向にあります。それゆえ、「高齢者」という言葉がもつイメージは、それらの現実を正確に表現するために見直しを要すると言えるでしょう。

高齢者の定義の再検討

高齢者の定義については、近年、見直しの動きがあります。日本老年学会と日本老年医学会が2017年に合同で提言したところによれば、現在の日本人においては、75歳以上を高齢者と定義し、65歳から74歳は高齢者の準備期にあたる状態と考えるべきだとされています。

その理由としては、運動機能、認知機能、病気の発症率やそのことによる死亡率、国民全体の高齢者の年齢区分に対する意識などさまざまな観点から検討が加えられ、75歳以上が当時の65歳以上に匹敵するくらいに若返っているという事実が明らかにされたからです。

参考:公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.92公益財団法人長寿科学振興財団 高齢者の定義再検討と新しい高齢者像─日本老年医学会の取り組み

かっこいい新たな呼び方 - 「高齢者」のイメージを変えるには?

私たちの言葉は、私たちの認識を形成し、社会のイメージを作り上げます。したがって、「高齢者」という一般的な表現を見直すことで、そのイメージ自体を変えることが可能です。現在「高齢者」という単語に置き換わる呼び名とその意味をいくつか紹介します。

シルバー世代

まず「シルバー世代」は一般的な「高齢者」よりも肯定的なイメージを持つ表現です。「シルバー」は価値のあるものを象徴という意味や、髪が年齢と共にシルバー色(灰色)になることから生まれました。

高齢者のイメージをポジティブなものに転換し、年齢を重ねた人々が社会に貢献する価値を認識するきっかけとなる単語として使われ始めました。

ベテラン

次に「ベテラン」もまた、経験と知識を象徴する語です。「ベテラン」は、長年の経験を持つことの価値を認識し、その経験から学びを得ることができるというメッセージを伝えます。

経験豊富な世代

また「経験豊富な世代」は、知識と経験の豊富さを強調する表現です。これにより、高齢者の知識と経験が価値あるものであるとの認識が高まります。

サードエイジャー

最後に「サードエイジャー(Third Ager)」は英語由来の言葉ですが、人生を大きく三つの段階、つまり「子供時代」「大人(成人)時代」「第三の時代」に分ける考え方に基づいています。そして、この「第三の時代」を指す言葉が「サードエイジャー」なのです。

この第三の時代「サードエイジ」は、自己実現や個人的な成長を追求する時間と捉えられています。これは、退職や家族との関係性の変化など、人生のこの段階によく見られる変化に対応するための新たな視点を提供するものです。こ

の期間は自己実現と継続的な個人的発展の時間とされており、活動的で充実した生活を送ることができるという、高齢者のイメージを一新する概念です。

それぞれの段階には特定の期待や役割がありますが、「サードエイジャー」の段階では、これまでの人生の経験と知識を活かして、新たな挑戦や学び、そしてそれによる成長を追求することが重視されます。

海外における高齢者のかっこいい呼び方

参考までに、英語圏における高齢者のかっこいい呼び方もご紹介いたします。

Silver Surfers(シルバー・サーファー):この言葉は、高齢者層の多くが積極的なインターネット・ユーザーであることを強調するために使われています。

Golden Agers(ゴールデンエイジャーズ):高齢者の価値と価値を反映したもので、高齢者を金にたとえています。

Prime Timers(プライム・タイマー):人生の最盛期、あるいは最良の時期を意味する言葉からきています。

新しい呼び方の採用がもたらす効果

言葉の力は、私たちの思考や行動に大きな影響を及ぼします。そのため、新たな呼び方「シルバー世代」「ベテラン」「経験豊富な世代」を用いることで、高齢者自身の自己意識や社会への貢献に対する視点が変わり、より肯定的な効果をもたらすことが期待できます。

まず、「シルバー世代」や「ベテラン」、「経験豊富な世代」などと呼ばれることで、高齢者自身が自らを見る視点が変わります。これらの言葉は、年齢を重ねることの価値を肯定し、人生経験の豊かさや知識を讃えるものです。自己意識が向上すると、活力や自己効力感が高まり、積極的な生活姿勢を保つことが可能になります。

また、社会全体も新たな視点で高齢者を見る機会を得ます。これらの新しい表現は、高齢者が持つ知識、経験、そして潜在的な能力を強調します。それにより、社会は彼らの有益な貢献をより評価するようになり、高齢者への敬意や理解が深まることでしょう。

さらに、新しい呼び名の採用は、高齢者が積極的に社会参加するためのモチベーションにもなります。自分が尊重され、自身の経験や知識が社会にとって価値あるものと認識されると、自己実現のための活動やコミュニティへの参加が促進されます。

結果として、新しい呼び方の採用は、高齢者自身の自尊心の向上、社会に対する積極的な貢献、そして社会全体の理解と敬意の深化を通じて、ポジティブな循環を生み出します。このように、新しい呼び方の採用は、一人一人の高齢者だけでなく、社会全体のための重要なステップとなるのです。

新しい呼び名の活用 - 日常生活での導入方法

新たな呼び方を日常生活で自然に用いるためには、私たち一人ひとりが意識的に取り組むことが必要です。

例えば職場では、年配の同僚や上司に対しても、新しい呼び名を用いることで、その人が持つ長年の経験や専門知識を評価する文化を育てることができます。

会議やプレゼンテーションの際には、「シルバー世代の意見」として彼らの意見を求めるといった方法が考えられます。

高齢者のイメージの進化

新たな呼び名を普及させることで、高齢者が持つ経験や知識が社会全体で評価され、尊重される環境が育まれるでしょう。これにより、高齢者自身が自己価値を再認識し、社会参加の意欲を高めることが期待できます。さらに、これが次世代への影響を及ぼし、年齢に関係なく各々がその人生経験を尊重し合う社会を形成する可能性があります。

また、高齢者の新たな呼び名の採用は、企業や組織における高齢者雇用の視点でも意義があります。経験豊富な世代が活躍することを前提とした職場環境の整備や、人事評価の視点が変化する可能性もあります。

しかし、呼び名の変化が全ての問題を解決する訳ではありません。これが一歩となり、具体的な制度改革や教育改革など、社会の構造そのものの見直しを進める契機となることが重要です。

新たな呼び名が、これからの高齢者の生活や社会のイメージをどのように進化させるかは、私たち一人ひとりの行動と意識によって大きく左右されます。高齢者のイメージを変えることで、私たちが生きる社会そのものが変わる、そんな未来を描くことができるでしょう。

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