コラム

高齢者の活性化に貢献するeスポーツ、自治体の取り組みとは?

2023年6月28日

近年、eスポーツが高齢者の間で注目を集めています。健康維持、認知機能の向上、社会参加の一環として、eスポーツは高齢者の生活に新たな活力をもたらしています。そして、その背景には自治体による積極的な取り組みがあります。本記事では、高齢者の活性化に貢献するeスポーツと、それを支える自治体の取り組みについて詳しく見ていきましょう。

eスポーツが高齢者の健康に与える影響

eスポーツは、単なるゲーム以上の影響を高齢者の健康に与えています。身体的な活動だけでなく、脳の活動も促すことから、健康維持や認知機能の向上に寄与すると考えられています。

一つの研究によれば、定期的にビデオゲームをプレイすることで、高齢者の記憶力や注意力、認知速度が向上することが示されています。また、eスポーツは、視覚的な情報を迅速に処理する能力を鍛えるため、老化による視覚機能の衰えを防ぐ効果も期待できます。

参考:the National Institutes of Health - Video games show potential in improving key aspects of memory in older adults

eスポーツと高齢者の社会参加

eスポーツは、高齢者が社会とつながりを持つ手段ともなっています。特に地域コミュニティや自治体の活動を通じて、高齢者がeスポーツに参加する機会が増えています。

例えば、地域のeスポーツ大会に参加することで、高齢者は新たな友人を作ったり、地域の人々との交流を深めたりすることができます。また、eスポーツを通じてインターネットを使う機会が増えれば、情報収集能力やコミュニケーション能力も向上します。これらは、高齢者が社会から孤立することを防ぎ、心の健康を保つために重要な要素です。

自治体による高齢者向けeスポーツ活用の取り組み

全国各地の自治体が、高齢者の活性化を目指してeスポーツの活用に取り組んでいます。地域の高齢者が健康で活動的な生活を送るための支援策として、eスポーツがどのように活用されているのかを見ていきましょう。

埼玉県鶴ケ島市の取り組み

鶴ケ島市では、高齢者に人気の電子機器を使ったゲーム競技「eスポーツ」を楽しんでもらう試みが進行中です。

市では認知症の予防効果を期待してオンラインによる交流戦を開催し、パズルゲーム「ぷよぷよeスポーツ」をオンラインで競う交流戦が開かれました。

参加者は市内の60~80代の7人で、対戦相手は熊本県美里町の9人でした。試合には、市販されている家庭用ゲーム機の通信機能を使いました。

参考:朝日新聞-高齢者eスポーツを自治体が後押しの理由 プロ選手の指導や交流戦も

兵庫県神戸市の取り組み

神戸市と「NTT西日本」、「PACKage(パッケージ)」は、「withコロナ時代におけるeスポーツによる地域課題解決に向けた連携協定」を締結。

NTT西日本が得意とするICT技術、PACKageが持つeスポーツチームの運営やイベント企画などのノウハウを活かした取り組み中。その一環として、同年12月から令和4年3月末まで、高齢者向けのeスポーツを活用した実証事業を行っている。

参考:ジチタイワークスWEB - 兵庫県神戸市 e-スポーツや会話ツールを活用し、高齢者の健康や交流を支援する。

富山県の取り組み

富山県では、富山県立大学と株式会社ZORGEと共に高齢者向けeスポーツ体験会を実施しています。また、全国初となるシニア向け全国eスポーツ大会の実施を予定しています。

体験会では「ぷよぷよ」「太鼓の達人」「グランツーリスモ」などの市販のゲームに加えて、富山県立大学が高齢者の介護予防を目的に研究・開発している「窓ふきの達人」というゲームもプレイされています。また、富山県と富山県eスポーツ連合などで実行委員会を組織し、高齢者を対象としたeスポーツ全国大会を開催予定です。

これらの取り組みは、高齢者の心身の健康増進や多世代交流の促進、地域活性化や競技人口の裾野拡大を目指しています。

また、これらの活動は介護予防にも寄与しており、特に富山県では「通いの場」における高齢者参加型のeスポーツ体験会を実施しており、その場での楽しい活動や社会参加が介護予防につながると考えられています。

参考:tayorini-eスポーツが介護予防の現場を変えるー富山県の取り組みを取材

東京都西東京市の取り組み

西東京市は地域の高齢者らがビデオゲームを楽しむ「eスポーツ講座」を開設し、高齢者を元気にするフレイル予防の新事業を始めることになった。同時に「健康デジタル指導士養成講座」もスタート。eスポーツのルールや機器の操作を伝えるだけでなく、仲間同士や若者世代との交流を図るサポート役になってもらう仕組み。

eスポーツ講座は、家庭用ゲーム機を使い、市内の公共施設のほか、地域にある高齢者の「通いの場」を会場に想定。人気の「太鼓ゲーム」や「運転ゲーム」を楽しみながら仲間らと交流する。

「健康デジタル指導士」は機器の操作やゲームの楽しみ方のほか、スマートフォンなどに不慣れな高齢者に基本的な扱い方も教える。

参考:ひばりタイムズ - eスポーツで高齢者を元気に 西東京市がフレイル予防で新事業

eスポーツ活用の課題と今後の展望

しかし、eスポーツを高齢者の活性化に活用するにはまだ課題も存在します。技術的なハードルや、高齢者自身のeスポーツに対する理解の不足など、解決すべき問題を明らかにします。また、これらの課題を克服するための提案や、今後の展望についても考察します。

一つの課題として、高齢者がeスポーツを始める際の技術的なハードルがあります。ゲーム機の操作方法や、インターネットの接続方法など、初めての方にとっては難しい問題もあります。これを解決するためには、自治体や地域コミュニティがサポート体制を整えることが求められます。

また、高齢者自身がeスポーツに対する理解を深めることも重要です。eスポーツが健康維持や社会参加に役立つことを理解し、積極的に参加することが、活性化につながります。

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